パソコンやスマートフォンから画像をアップロードするだけで簡単にオリジナルグッズを作成・販売することができるサービス「SUZURI byGMOペパボ(以下、SUZURI)」。これまでさまざまな機能をリリースし、最新技術を用いてクリエイターの表現の幅を広げてきた。
そんななか、画像生成AI「Stable Diffusion」を提供するStability AIと連携した『スリスリAIラボ』の提供を開始した。この機能では自分のアイデアを形にし、ものづくりのおもしろさを感じられるという。
この新機能の魅力やAI技術とものづくりの関係について、GMOペパボ株式会社のSUZURI事業部 プロダクトマネージャーの牧山ミルテさんに話を聞いた。
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PROFILE|プロフィール
牧山 ミルテ(まきやま みるて)
新卒でCtoCのスタートアップにディレクターとして入社。以降エキサイト株式会社、Radiotalk株式会社を経て、2020年11月よりGMOペパボ株式会社に入社。現在はオリジナルグッズ作成・販売サービス「SUZURI byGMOペパボ」のプロダクトマネージャーとして従事。
登録クリエイター数は73万人を超える
SUZURIは、「誰でも無料で簡単に、自分のオリジナルグッズを作成・販売することができる」というコンセプトから始まったサービスだ。
それまで多くの人にとってハードルとなっていた「ショップを開設する」「商品を製作する」「在庫を管理する」「発送する」といった一つひとつのハードルを極限まで下げることで、どのECショップ作成サービスよりも簡単に、ショップ運営を始めることができるシステムを実現した。
サービスの提供開始から今年で9周年を迎えた現在も、「つくることを誰にでも簡単に、つくられたものを多くの人に届ける」という理念のもとサービスを運営している。
「イラストレーターや美術系学校の学生など、ご自身のイラスト作品を生かされている方々から、YouTuber、お笑い芸人、企業など、ファン向けの公式グッズ販売に利用していただくなど、さまざまなジャンルのクリエイターにご利用いただいております」
登録クリエイター数は73万人を超え、多くのユーザーに愛されているSUZURI。なぜこれほど多くのクリエイターに選ばれているのか。
「SUZURIの特徴である、画像をアップロードするだけでショップ開設ができ、在庫を抱えるリスクがなく、梱包・発送等の運用コストが発生しない・得られる利益(トリブン)が明確という3つのメリットが、多くの方にご利用いただいている理由だと思います」
通常、個人でグッズ販売を開始する際には、在庫を抱えてしまうリスクや、自分でショップの開設や売り場を用意しなければならず、また梱包・発送作業も行う必要がある。
このようなハードルをなくし、画像さえ用意ができれば、これらの手間なく誰でも簡単にグッズ販売を始めることができるのが最大の特徴だ。また、「販売プラットフォームという側面も兼ね備えているため、SUZURI経由で新たなファンを獲得できることも特徴のひとつ」と牧山さんは教えてくれた。
スリスリAIラボで、さらなる創作活動を支援
SUZURIでは先日、画像生成AI「Stable Diffusion」と連携した新サービス『スリスリAIラボ』をリリースした。現在SUZURIのiOSアプリ版のみにて提供している機能だというが、どのようなものなのか。
「ユーザーがテキストを入力して生成ボタンを押すだけで、イラストにTシャツが合成された状態のイメージ画像が作成されます。その際、任意でスタイルを選択するだけで、ドット絵風、漫画風、ネオン風といったテイストを反映することもできます。
作成したTシャツは、気に入ったらそのままワンタップでグッズ化し、自分のみが購入できる非公開アイテムとして保存することができます」
スリスリAIラボを活用することで、クリエイターは画像のアップスケーリングや背景の透過、細かな要素の補填など、手間がかかっていた作業の短縮ができるようになったり、普段の創作活動からは生まれなかった新たなアイデアが芽生えたりするなど、さまざまな可能性が生まれているようだ。
機能のリリース後、実際に使用したクリエイターからは 「SUZURIはイラストを描ける人じゃなくても楽しめる工夫してくれるのが良い」「SUZURIのように開発メンバーが揃っているからこそできる新しい取り組みだと感じた、今後も期待している」といった声が届いているという。
「AIの活用により、ものづくりにハードルの高さを感じていた人には『アイデアが形になるおもしろさ』を提供し、すでにつくる楽しさを知っている人に対しても、自分の作品の新たな可能性を見つけたり、時間と手間を要していた修整作業を短縮したりと、さらなる創作活動を支援していきたいと考えております。
また、SUZURIでは『スリスリAIラボ』以外にもAIを積極的に活用しています。たとえばAIを活用した購入者向けの機能として、チャット形式でそのユーザーにおすすめのアイテムを提案したり、購入履歴から類似のデザインをレコメンドしたりといった機能もすでに提供しております。こうした機能によって、より多くのクリエイターの作品を届けるという側面での創作活動の促進も実現できればと思います」
AIを活用した画像生成においては、著作権の侵害などの懸念も考えられる。SUZURIではどのように対策しているのだろうか。
「著作権侵害や、公序良俗に反する画像が生成されるリスクについては、以下の対応を行っております。
1つめは 利用規約に反する言葉を入力できないようにする対応です。Stable DiffusionのAPIにユーザーのリクエストを送信する前に、SUZURI側の実装で利用規約に反する言葉を一定数防いでいます。該当する単語を入力して生成ボタンを押しても、イラストが生成されないようになっています。
2つめは、『ポジティブプロンプト』と『ネガティブプロンプト』のプロンプトの工夫です。ユーザーが入力したプロンプトに対して、追加のプロンプトをSUZURI側で付け加えています。これらはポジティブ・ネガティブプロンプトと呼ばれるもので、強調したい要素や逆に抑制したい要素を指定するものです。それぞれのプロンプトや優先度を指定して、生成される画像のクオリティが上がるように、また不適切な画像が出力されないように工夫しています。
3つめは注文時の画像チェックです。そもそも前提としてSUZURIでは、権利侵害を許容していません。
AI生成画像に限らなくても、アップロードされるすべての画像に対して著作権の侵害などを防止する取り組みを行っています。注文時に画像を確認し、著作権侵害の恐れがある画像を発見した際には、注文をキャンセルする体制を構築し、適宜対応しています。
よって、スリスリAIラボで生成された画像につきましても、同様の対応を行っています。
さらに、生成された画像について、『依拠性』(他者による既存の著作物を利用して創作している)があるかを判断するために、どのようなプロンプトで画像が生成されているかの確認も行っております。その上で、意図的に著作物に似せようとしたことが認められた場合は、キャンセルの対応を取っております」
AIは人間の創作活動を支援していくための手段
SUZURIがものづくりを支援する際、「ものづくりのハードルを下げられているか」「つくられたものをいかに多くの人々に届けられるか」を重要視していると牧山さんは話す。
「AIの登場は、AIがクリエイターの代替となることを意味するものではなく、むしろその反対だと、SUZURIは捉えています。“ものづくり”の起点は常に人間にあり、作品が生み出されるまでのストーリーや、受け取る人が覚える感動、ものをつくる楽しさは、すべて人間だからこそ味わえるものであり、AIが進化しても変わることはありません。あくまでAIは人間の創作活動を支援していくための手段であり、創作行為の主体ではないと捉えています。
その上で、私たちは近い将来、AIとの共存は確実なものになると捉えています。AIは大きな技術革新をもたらすものであり、積極的に活用していくことが、将来的には必要となってくると考えられます。クリエイターの創作を促進するツールとして、SUZURIはAIに大きな可能性を感じています」
これまで画像制作にハードルを感じていた人にも、自分のアイデアを形にし“ものづくり”をすることのおもしろさを感じてもらうことを目的としてリリースされたスリスリAIラボ。
今後について聞くと、「AIを活用し、すでに創作活動をしているクリエイターにとっても有益な機能の提供(修整の手間の削減や、アイテムをより魅力的に見せるなど)や、購入者とクリエイターがもっと出会いやすくなるための改善もしていきたい」と教えてくれた。
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